それは思春期に読んどけよ、って類の本があります。ラヴクラフトとか、サリンジャーあたりですね。ちなみに後者はキャッチャー・イン・ザ・ライだけ読みましたけど、「読んだ」以外の感想がなかったです。わたしの感受性はしなびてたようですね。
ラヴクラフトは置いてなかったので仕方ありません。たくさん本屋があり、大きな図書館があるからって良書に巡り会えるとは限らないのです。
とくに90年代くらいまでは、わたしをふくめ世の中の思想が左よりだったため、正直図書館の本も出版関係も以下略。とくにオタク関係に分類された、SFとか幻想小説はなかったものとして扱われていました。
ハインラインなど図書館に1冊しか無く、しかも『獣の数字』。英語版ウィキペディアを参照したところ、同作は『読む必要のない本があることを教えてくれた本』などと批評されていました。同感です。ハードSFって楽しくないんだと思いました。
さて暗い青春はおいといて、いまさらオーウェルなどを読み始めました。
『1984』とか『動物農場』なんかは、20代前半までに読んどく本です。だけどなかったんですから仕方ありません。
たまたま『スポーツ精神』がオリンピックの時期に推薦されてたので、Kindle Unlimitedで借りて読んでみました。評論集ですがこれが面白い。
こんな頭のいい人が歯切れよく書いたエッセイというのを自分も見習ってみたいものです。
特に小説とも言える『象を撃つ』『絞首刑』は、澄み切った文章で植民地時代の支配者である作者自身を顧みた名作でした。植民地ってのは支配者としてもそうでなくてもイヤなもんですね。
中でもわたしが惹きつけられた一文は『復讐の味は苦い』の中にあったものです。
復讐というのは自分が力を持たないときに、自分が力を持たないがゆえに、したいと思う行為のことだ。だから、自分にはしたくてもその力がないのだという感覚がなくなった瞬間、その欲望も消えてなくなってしまうものなのだ。
ジョージ・オーウェル. あなたと原爆~オーウェル評論集~ (光文社古典新訳文庫) (p.23). 光文社. Kindle 版.
なるほど、わたしにも歴代のくされ上司どもというムカつく連中がいます。そいつらの数人はリストラや倒産の憂き目に合ったため、わたしの復讐リストからは外れていました。天の神さまありがとうございます。
話を戻せばオーウェルの著作から、わたしは今までになかった新しい視点を得ました。これから名高い『1984』を読む予定ですが、楽しみにしています。