たとなてかない

『た』い『と』る『な』ん『て』おもいつ『かない』という意味です。内容はフィクションですよ。

デパートの大食堂

わたしが子供だったころ、デパートってのはちょっと特別な場所でした。両親ともにちゃんとした服を着て、子供にもきちんとした格好をさせます。

なんかおめかしして出かける場所だったんですね。

で、子供のメインイベントは大食堂です。今でも商業施設の最上階はだいたいレストラン。その頃も同じで、レストランの中にデパートが直営する大食堂がありました。

大食堂ですから、和食から洋食まで好きなものが選べます。腐っても百貨店、それなりのお値段でそれなりの食事を提供していました。家族連れにとっては最高の店です。

子供ってのは蕎麦や刺身なんてありがたがらないもんです。大食堂なら刺身も和食もあり、ハンバーグもお子様ランチも出してくれます。家族みんなが好きなものを食べられる。そういう店だったわけです。

「今のファミレスと何が違うの」

高級感ですね。なんとなく粛然とした雰囲気がありました。そこらの嬢ちゃん坊ちゃん、ふだんは木登りをこよなく愛するわたしみたいなタイプでも、椅子の上でかしこまって膝に手を置いて待っています。

だいたい机の上には生の花が一輪。それだけでなんか雰囲気が違います。高いところからの眺めは青空が見えて心地よく、椅子はビロード張り。ビニールが上に置いてあっても白いテーブルクロスが掛けられています。

ウェイトレスやウェイターさんたちもシックな紺色の制服で白いエプロンに銀のお盆。カレーを頼むとあの銀の容器で持ってきてくれます。

スプーンやフォークもいちいち紙ナプキンに包まれていて、百貨店ごとに包み方がちがっていたり。スプーンなんかは包み紙の上がチューリップ型になるように工夫されてました。

こういうところなので、子供ながらに「ここはお行儀良くしてたほうがかっこいいんだ」と思うわけです。

わたしはお子様ランチよりハンバーグでした。未だに味覚が成長していません。このハンバーグも白いお皿に整然と並べられ、フォークとナイフでご飯を食べることになります。

ああいうところで、なんとなく行儀を付けられるところでは付けたほうがかっこいい、みたいな価値観を学んだ気がします。

今ではそういう所はあんまりないので、ちょっと寂しいですね。

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