『侍女の物語』で知られる、マーガレット・アトウッドの小説『オリクスとクレイク』を読みました。
『侍女の物語』もひどいディストピアですがこちらもなかなか悲惨。
ちなみに完全なネタバレなので気になる人はパスしてください。
あらすじというかこんな感じの話
やあ、僕クレイク! 未来のチョーすごい科学者さ! どれくらいすごいって?
そりゃあ新人類を作り出すほどだよ。
ぼくの作った新人類、『クレイカーズ』は、めっちゃクールでイケてるんだ。彼らは争ったり憎しみをもったりしない。そういう風に脳みそを遺伝子からいじったんだ。
セックスにあぶれる男だっていない。性交は5人で行われるんだ。1人の発情した女性に4人の男があてがわれる。外見? もちろん全員美形に決まってる! ぼくがデザインしたんだからね。
彼らのおしっこは猛獣を近寄らせないし、喉を猫みたいに鳴らして怪我を癒やすこともできる。彼らが人類に取って代われば地球は平和になる。素敵だろ?
ぼくの父を殺したこのクソったれなディストピアに復讐できるんだ。父は正義の人だった。地球を支配してる製薬会社の不正を暴こうとしたら暗殺されたんだ。密告したのは母さ。
友だちのジミーも似たような生い立ちだ。あいつの母さんも、このクソったれな世界を糾弾して殺された。だからぼくたちはわかり合えたんだ。
もちろんぼくの彼女のオリクスだって賛成してくれてる。オリクスはかわいそうな女性なんだ。東アジアあたりで売春をやらされてたけど、ぼくがみつけだして救ってあげたんだ!
オリクスはぼくの作戦に同意してくれた。オリクスはぼくにとって女神だ。
なのに、どうして。どうしてジミーとオリクスが寝てるんだ?
ジミー、お前、人が拾い上げてやらなきゃクソみたいな人生を送ってきたのにこの恩知らず!
そしてオリクス! どうしてぼくを裏切ったんだ!
え? 人類を滅ぼすウイルスをまくなんて聞いてなかった? そうだっけ。
でもそれとぼくを裏切ったことは関係ないだろ、このビッチ! 殺してやる!
人類もぼくも滅びちまえ。
ジミー、あとは頼んだよ。ぼくのクレイカーズと幸せにやってくれ。
君の恋人はどこにもいないけどね!
ははは!
人類なんて滅びちまえ! ぼくの父を殺し、ぼくを裏切ったオリクスもくそくらえだ!
おしまい。
だいたいこんなかんじです。まあ話はジミーの視点から描かれるので、クレイク側の話はわたしの想像となりますが、ほぼこんな感じです。
登場人物は以下の3人。
ジミー(スノーマン) 主人公。広告会社のコピーライターで女たらしのチャラ男。美形で女に感情移入できるタイプなのでモテる。理系能力とサバイバル能力は全く無い。
クレイク ジミーの友だちにして天才科学者。ジミーから言わせるとモテない。父親を暗殺した社会を憎んでいる。セックスもバカにしていたが、オリクスを恋人にした途端手のひらを180度返した。
オリクス ジミーとクレイクに惚れられるアジアンビューティー。欧米人が考えそうなエキゾチックで謎めいた美女として描かれる。ジミーとクレイクの両方に手を出して人類滅亡のトリガーを引く。
物語は人類がほぼ滅亡した世界で始まります。ジミーはただ1人サバイバルをしていますが、能力が無いため死にかけています。
そんなジミーが「どうしてこうなったんだろう」と自分の生涯を回顧する形です。まあ自分がオリクスに手を出したからだってのは分かってるので逃避ですね。
バイオ企業が世界を支配しているので、生態系はぐちゃどろ。獰猛なヒトブタや遺伝改造された犬、スカンクの改造種がはびこっています。
クレイクが人類滅亡なんて企んだのは、父親がバイオ企業の不正を暴こうとして殺された敵討ちでしょう。だからこそ、似たような立場の母を持つジミーと仲良くしてたわけですが、ジミーのほうは最後までその辺に気がついていなかったようです。
これは三部作の1つめで、最後は翻訳されていません。早く翻訳されてくれ。