たとなてかない

『た』い『と』る『な』ん『て』おもいつ『かない』という意味です。内容はフィクションですよ。

母と祖父とそのアヒル

母は福島の奥の出身で、つまり田舎に住んでいました。見渡す限りの田んぼにでかい岩、そして会津磐梯山とてんこ盛りの自然に囲まれて育ったそうです。

さて田舎のことですから、自宅に池がありました。その池にはアヒルが5羽、優雅に泳いでおりました。戦後の話なのでそのタマゴはよく食卓に載ったそうです。

ヒルというのは一日中水の上でのんきにやっているわけでなく、地上にもいます。そんな時、野犬がやってきて追っかけられるそうです。家の人がいれば犬を追っ払えますが、いないと5羽そろって木の上に避難しているとか。

池にいれば犬なんてこないんじゃ無いかと思いますが、あいつら泳ぎますし、木の上のほうが安心できたんでしょう。

そして台風が来るともっと大変。池は近所の川から水を引き、排水も川へ流しています。アヒルやコイが出て行かないように堰がしてありますが、大雨で壊れます。

するとアヒルはわーいやったーとばかりに脱走します。翌日、いなくなったアヒルを探しに母とその兄弟が動員されます。上流か、下流か。アヒルと風の気の向くままに流されていくそうです。

ついでにコイも流されますが、これは近所の人の夕飯になります。自然のコイだと思ったというのが言い分です。

自然に緋鯉が泳いでるわけがありませんが、胃の中に収まっては仕方ありません。

対してアヒルは福島に定着してるわけでないので、近所の人の胃の中に入ることはありません。一発でバレるからです。そして10キロくらい先からアヒルの消息が知らされ、子供達は仏頂面をしながらアヒルを抱っこして戻ります。

幼い頃、この呑気なアヒルたちの話を聞かされていましたがある日気がつきました。

てっきり野良のアヒルが定着したのかと思ってましたが、そうではないということに。

いったいアヒルたちはどこから来たのでしょう。

「酔っ払ったお祖父ちゃんが夜店で買ってきた」

……。

わたしは神奈川県町田でウズラのひよこ売りをずーっと見ていたことがあります。欲しいなと思いましたが買わない理性はありました。ていうか夜店のカラーひよこを買ってきた話はよく聞いたけどお祖父ちゃんとは思わなかったよお祖父ちゃん。

しかも酔っ払って買ってきたってマンガの世界じゃんお祖父ちゃん。

わたしはどうも母方の祖父と父方のルーツから性格ができたようなのですが、あらためてそのことを痛感しました。

お祖父ちゃんは美味しいものが大好きで料理も出来て好奇心が強くて、油の取り過ぎで早死にしました。

そろそろ健康診断の季節です。お祖父ちゃんは尊敬してますが早死には避けたいので、油物を控えようと思います。

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