『アンベードカルの生涯』という本を読みました。カースト制の最下層であるダリット出身の政治家、アンベードカルの伝記です。
読んだきっかけとしては、
「そーいや最近インドが成長してるけど、カースト制どうなったんだろ」
という好奇心でした。
結論からいうとダリットとかは変わってないようです。
そんなダリットたちのために立ち上がった英雄が、アンベードカルでした。
アンベードカルもダリットの出身でした。生まれは1891年、明治24年です。日本では警官がロシア皇太子に切りつけた大津事件の年ですね。
この人は頭が良く、高い教育を受けることができました。最下層で貧しいはずなのにどっから金が出たかというと、イギリスです。おじいさんとお父さんがイギリスの雇われ軍人やってたのでそのお金で進学できたんですね。
あとインドの藩王さまからも援助をもらえました。この時期にはインドにも開明君主がいます。
ただし学校ではめっちゃくちゃイジめられました。カーストの決まりでダリットは水に触れないため、誰かが喉に水を流し込んでくれるまで待つしかなかったとか。
同じ人間にする所業じゃないでしょう。水なかったら死ぬぞ。
この水に対する差別は実にひどく、ダリットは水源や井戸に近づいてはならない、村に井戸があっても5キロ先まで歩いていけとか言われます。いや死ぬだろ。
それでアンベードカルは戦います。
一応イギリス統治下の時代なので、法律上では「誰が使ってもよい」とされた貯水池がありました。しかし地元民はノー。
この貯水池でアンベードカルはデモ行進を行い、自ら手で水をすくい、飲みました。
これだけのことで暴動発生。逮捕者が5人出ました。
その後、ダリットではない人々は、『ダリットによって汚された貯水池を清める儀式』を始めました。
その内容。
先ず一〇八箇の土器製の水がめに貯水池の水を汲み、その壺の中に、ヨーグルト、牛糞、牛の小便、牛乳をなみなみと入れ、ブラーミンが厳そかにマントラ(経文)経文)を誦する中、その一〇八箇の壺をしずしずと池に沈めたのである。
D・キール;山際素男.アンベードカルの生涯(光文社新書)(p.87).光文社.Kindle版.
まあ、文化というのはそれぞれです。とはいうものの、衛生的に見ればアンベードカルの手よりは牛糞とかのほうがヤバいんではないかとわたしは思います。
裏を返せばダリット達はそれ以下だと思われてるわけですね。
アンベードカルはロンドン大学とコロンビア大学で博士号を取得。さらにボン大学に留学して、弁護士資格も取得した天才です。
時代はインドがイギリスから独立していく激動のさなか。アンベードカルは独立インドの憲法の作成にも関わり、ダリットたちの教育機関を作ったり、職を与えたりするよう奔走しました。
それでも。
差別はなくなりませんでした。
アンベードカルはその生涯の終わりに、仏教に改宗します。
そして現在、いまだカースト差別は消えていません。
インドの存在感が世界情勢で増して行く中、このカースト問題が早く解決してくれるよう祈っています。