たとなてかない

『た』い『と』る『な』ん『て』おもいつ『かない』という意味です。内容はフィクションですよ。

ミッドサマーをホラーギャグ映画として見てみよう

アリ・アスター監督が、新作映画『ボーはおそれている』を2024年に発表するそうですね。同監督といえば『ヘレディタリー・継承』や『ミッドサマー』でホラー作品で有名です。

わたしも見ましたが、ミッドサマーについて言えば、あれはホラーギャグとして見ることもできます。

あ、めちゃくちゃ『ヘレディタリー』と『ミッドサマー』のネタバレですんで、見てない人はパスしてくださいね。あと、冗談ですからね。あくまでジョークなんで怒らない人だけ見てください。

さて『ミッドサマー』は生理的嫌悪感とか胸くそ悪さとかが評判です。北欧のめちゃくちゃ明るい白夜の中でホラーってのも新感覚でした。

新感覚なのは主人公グループもそうです。たいていホラー映画の主人公グループには、イヌと子供と主人公がいます。主人公はたいてい理知的な女性か、人生に悩みを抱えてる壮年男性あたり。

『ミッドサマー』にはそんな観客が感情移入できそうなヤツはいません。

メンヘラとキョロ充とヤク中と陰キャのグループです。

友達になりたくない人たちですね。

実際に彼らには親身になってくれる人も友だちもいません。後で分かりますが、彼らはイカれた新興宗教の生贄として選ばれています。つまりこいつらが行方不明になったところで必死に探してくれそうな人がいないという裏付けがとれています。

「あー、あいつらならヤクやって森に消えたよ」

「そっかー、じゃあどっかで骨になってるね」

そういう程度の人たちです。

なので、こいつらがどんな目に遭おうが、こっちとしては安心して見ていられます。

そもそもヒロインにして主人公が開始数分で、夜中の2時に彼氏と友だちに泣きながら電話をするというメンヘラ全開です。これを見た時、

「あーあっちにもメンヘラいるんだ……やな世界共通だなあ……」

と思いました。

まあこの人、半年前にやっぱりメンがヘラってる妹が両親を道連れに心中してるので、多少同情の余地はあります。ですが、そういう大事が起きた時にやることは大学を休学して専門の機関にかかることで、友だちと彼氏に電話することじゃありません。

裏を返せばそんなに親身になってくれる人も親戚もいないってことですね。彼氏いるのに。

その彼氏、肉親失って明らかに精神やべえ彼女を放置してやることは夜中のピザパーティ。人としての情とか、困難に立ち向かう勇気も機転もない人です。

見てると分かりますが、別れると次の彼女がいないので仕方なくつき合っています。この辺は彼女も一緒です。

あとはヤク中と陰キャ。ヤク中は明らかにヤバいし、陰キャは言うべきことを言わないタイプです。

この4人は他につるむ相手もいないのでしかたなくグループでいます。

『ミッドサマー』は、このダメ大学生が、『ホラー映画でやったら死ぬ行為』をことごとくやって死ぬ姿を見るという映画です。

まずヤク中。神聖な木に立ちションして殺されます。よくある『一見たいしたことないけど地元民には大切にされてるもの』を台無しにしたパターンです。「お前あのほこらに入ったのか」ってやつですね。

ただしこいつらは生贄です。普通に考えれば、神聖な木であればよそ者に触れられないようにするはずです。なのに、そこらにほったらかしてあった。殺すための理由としてわざわざセットしてるわけです。

さらに『アッテストゥパン』という儀式をわざわざ見せます。口減らしに老人を殺しますが、そんなもんよそ者に見せたら警察に駆け込まれ大惨事になるのはバカでも予想がつきます。

もうこの時点でよそ者は死が確定してます。携帯の電波? 北欧のド田舎なのできっと通じないんでしょう。

もちろん逃げたら「大切な儀式を汚した」として殺害です。これでモブ2人死亡。逃げなくても、殺す罠はいくらでもあります。

陰キャは、レポートのために隠されてる書物を見ようとしてタブーに触れます。正直そんなことしてるなら逃げろよと思いますが、ここはギャグです。正直に「志村後ろー」といいつつ楽しみましょう。

残りはメンヘラとキョロ充です。まずメンヘラは、参加しなくてもいいダンスにいちいち参加して優勝し、生贄候補となります。メンヘラは洗脳しやすいので、村の仲間候補へ。

キョロ充は大切な種馬として扱われます。リア充へクラスチェンジですね。

正直、じいさんばあさんの惨殺事件を見たあとでよくエロい気分になれるなと思いますが、ここでミッドサマー一番の笑いどころ、集団セックスシーンがやってきます。

綱引きみたいなセックスシーン、さらにケツまで叩かれます。ホラー映画の法則、セックスしたやつは死にます。リア充死ぬべし慈悲はない。

普通のホラー映画ならもっともおぞましいシーンのはずですが、ミッドサマーでは一番笑えるシーンなのが素晴らしい。よっぽどリア充とセックスに恨みがあると思われます。

確か監督は失恋がきっかけで作ったとか言ってた気がしますが気のせいです。

そして逃げ出すと殺された連中に再会。ホラー映画のド定番です。キャーキャー悲鳴を上げてサイリウムを振りましょう。礼儀です。めっちゃ力入れて『ホラー映画定番・うぜえ大学生グループのなれの果て』が描写されています。

また、ホラー映画ではカップルも死にます。もちろんメンヘラとキョロ充もです。これでもかとばかりに両者を引き裂いてきます。よっぽどカップルに恨みが以下略。

新しく一緒に吠えたくってくれるメンヘラ仲間を手に入れたメンヘラは、ここぞとばかりに自分を裏切った彼氏を断罪します。クマの毛皮に入れて焼き殺しましょう。なにかよほどの恨みが以下略。そしてメンヘラは悲劇のヒロインとして、無事カルト教団の仲間入り。まあもともとヤバかったので、受信する電波の周波数が変わった程度です。ホラー映画定番、生き残ったヤツが実は……パターンでしょうか。

非常に長くなりましたが、わたしはミッドサマーを素晴らしい映画だと思っています。映像美、難解な謎、ホラー映画の新境地を切り開いた作品でしょう。

ありがとうアリ・アスター監督。

あとわたしは小心者なんで、この妄言は冗談と笑っていただけると助かります。