たとなてかない

『た』い『と』る『な』ん『て』おもいつ『かない』という意味です。内容はフィクションですよ。

236冊から選ぶ2022年の本3選

Kindleアプリには、今年何冊本を読んだか教えてくれる余計な機能が付いています。600くらいはいくかなと思ってましたが全然ダメでした。

と、思ってましたが、これはアプリで読んだ冊数です。最近Kindleで買った漫画はブラウザで読んでるので、それを入れるとおそらくは倍は行くんじゃないかと。

とりあえず、2022年の本3選。

1.ヤクザ・チルドレン

ヤクザ・チルドレン

石井光太さんのルポ本です。いやーきつい。ヤクザは最近暴対法によって締め付けられてるわけですが、社会復帰が難しい。まあ、氷河期で新卒跳ねられてひぃひぃ言ってる程度の自分でも世の中の本流からは外されてるわけですから、ヤクザとなればそれ以上でしょう。

社会復帰が難しければ貧困に陥るだけで、その子供たちはめちゃくちゃ被害を被るわけです。

それでも頑張って這い上がれればもうけもの。そうでなかったら刑務所です。

周りにろくな大人がいないため、学校で勉強して卒業して就職するという一般的ルートが思い浮かばないわけで。

私はそれだけというのもどうかと思いますが、一般的ルートでさえ知らなくて選べないというのはずいぶんひどいものです。

2.いじめの構造

いじめの構造-なぜ人が怪物になるのか (講談社現代新書)

ちょっとしたホラー小説より怖いです。なんでいじめをするのかという単純な問いに「その場のノリしか考えてないから」と断言し、いじめている加害者が虐められている被害者から心的エネルギーを搾取しているというシステムをわかりやすく解説しています。

なんで虐めてるヤツが出世するのか、虐め被害者はいつまでたっても被害者なのかという理由が分かりますね。とっとと虐め加害者を法的に罰するべきじゃないでしょうか。

3.選べなかった命

選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子 (文春文庫)

よく被害者が起こした裁判で、賠償金いくらとか請求して「災難を金にするなんて」みたいな批判が起きます。まあだいたいよくみんな金が欲しくてやってるわけじゃないんですね。

「謝って欲しい」とか「真実が知りたい」とか、だいたいそんな理由です。そして加害者はたいてい謝らない。法廷も謝ってどうこうとは言えないので、『金』という万人に通じる価値観で判断するしかないわけです。

この『選べなかった命』は、2011年に医師の誤診で正常と判定された胎児が産んでみたらダウン症だったのでその損害賠償請求をした、という事件のノンフィクションです。

www.nikkei.com

これは当時けっこうな話題になりまして。ダウン症だったからって損だというのはどうか、しかもそれで賠償金とか金目当てかとか。

このノンフィクション読むとそうじゃなかったと分かります。

親の方はただ、誤診した医師に謝って欲しかった。それは法廷では請求できないので、仕方なく裁判では賠償請求をせざるをえなかった、という話です。

ただし裁判を行うにしても、なかなか難しい。というのが、損害賠償をする当事者が親ではなく生まれてきた子供(すでに死去)だからです。

「障害を持って生まれてきた子供は排便も出来ず、痰を吐けば出血し、検査で骨折をし、体中が紫色に変色して苦しんで死んでいった。仮に誤診がなされず、堕胎が行われていれば、子供はこのような苦痛を受けずに済んだはずだった」

こういう理屈で訴訟が行われたわけです。子供自身が出生そのものが損害だった、として訴訟を起こす裁判をロングフルライフ(wrongful life/間違っている出生)訴訟といいます。

アメリカでの例としては、不倫して生まれた子供が、非嫡出子として出生した不利益の損害賠償を求めて起こした裁判があります。父親は不倫してて結婚する気がなかったので、生まれてくる子(原告)は最初っから非嫡出子としての不利益を被っていた。その責任を親に求めたという裁判です。

ゼペダ対ゼペダ訴訟というケースです。

親はただ誤診した医者に謝って欲しかっただけなのに、問題はややこしくこじれていくばかり。

結局、子供自身の損害賠償は認められませんでした。誤診した医者も逃げるばかり。

この話、いろいろ考えさせられるので、一読してみるのもいいかもしれません。