たとなてかない

『た』い『と』る『な』ん『て』おもいつ『かない』という意味です。内容はフィクションですよ。

マフィンに添加物を3倍入れてみよう

皆がマフィンマフィンって言うからマフィンが食べたくなりました。作ってたことだし、グラシン紙(マフィンの外側の紙)はどっかにあるはず。

探してみましょう。

……去年だかに買った紅茶が出てきました。ラッキー。あと味の素の親戚からもらったやつとかいろいろ。

肝心のグラシン紙が出てこないんですが。

使い捨てのプリンカップを見つけたのでこれでいいことにします。おっと、オーブンの予熱も始めておかないと。

さて、お菓子作りというのは新兵の訓練に似ています。具体的に言うと寒くて硬いバターをボウルの中で電動泡立て器を使ってかき混ぜ痛めつけるところから始まるからです。

バターはストーブの前に置いといたんですがなかなか言うことを聞きません。そこで、電動泡立て器という文明の利器を使って、

「きさまらシャキッとせんかぁ! 大人しくかき混ぜられてクリーム状にならんか!」

と、鬼軍曹さながら叱りつけつつ作業します。しかし、バター新兵くんたちは言うことを聞いてくれません。つぶつぶになってボウルの内側に跳ね返ります。

仕方ないので飴を持ち出します。できる指揮官いえ、お菓子作り人は飴と鞭を使い分けるのです。まず熱湯を用意。その熱湯で、布巾を絞って蒸し布巾にします。

それから熱い布巾をボウルの下に敷いてやります。こうするとバター新兵くんたちがやる気を出してクリーム状にかき混ぜられてくれます。ボウルの底でなく、周りの壁面に。

ここにバターくんたちがいても迷惑なだけなのでヘラでこそぎ落とします。そして熱い布巾を除去。これ以上温めるとバターが溶けてへなちょこ軍隊になってしまいます。教練は難しいのです。

ヘラでこそいだバターを集めて電動泡立て器でしごきます。しごいてしごいてしごき抜いて、バターに戦車の履帯みたいな痕がつくようになったら訓練は終了です。

ここで砂糖を3分の1ずつ入れて、バター君達となじませます。3分の1といいますが、経験上ちょっと少なめくらいのほうがいいです。異分子は少ない方が洗脳しやすいのと同じです。

最初は電動泡立て器を弱めに、だんだん強くしていくのがコツです。水からカエルをゆでるのと同じで、だんだん強くしていくと相手に気づかれず速やかに事が終わります。

そしてやはりバターと砂糖の混合物に履帯の痕がつくようになったら、砂糖を3分の1ずつくわえ、同じ訓練作業を繰り返します。

また、途中でタマゴを出して室温にしておきましょう。忘れてたので熱湯に浸けて事なきを得ました。

タマゴはよくほぐして、白身と黄身の区別がつかないようにするまで混ぜて起きます。このタマゴを大さじ1くらいバターと砂糖軍団に入れます。

本には3分の1ずつと書いてありますが、ここは少ないほうが楽です。異分子は多いと反乱を起こしやすくなりますから。

そして一気に電動泡立て器で軍団に混ぜ込みます。情け容赦など一切要りません。とっとと入れましょう。クリーム状になってきたら、追いタマゴをします。また容赦ない電動泡立て器の攻勢で責め立て、生地を一人前にすべく鍛え上げます。

タマゴを入れ終わったら粉の準備です。小麦粉とベーキングパウダーをはかって、3分の1ずつ入れましょう。ベーキングパウダーを入れとかないとあとで大変です。

ここからはヘラの出番です。ヘラを身体に水平にもち、ボウルの中央を縦にたたき切るような勢いで動かします。さながら海を割るモーゼのようにやってください。

そしたら今度はヘラで生地をボウルの壁面からこそげ取るように回転させます。ドケチが黄金をこそげとってるくらいの勢いでやってください。回転させたらまたモーゼをやります。

しばらくドケチとモーゼを繰り返して生地をいじめ抜くと、粉だらけでどうにもならなかった生地がまとまってきます。そしたら2回目の粉を入れておなじく訓練。そしてここで牛乳の半分を入れると本には確か書いてありました。

わたしは忘れたので、最後の粉の時に慌ててはかって牛乳を全部入れました。道理でどんなにかき混ぜても生地が言うこと聞かなかったわけです。ここから生地に気合いを入れまくればなんとかなるはずです。

ココアも入れてから気がつきました。

ベーキングパウダー入れ忘れた。

まだなんとかなるはずです。目分量でベーキングパウダーを突っ込んで、全体に混ざるようにしました。

さて、わたしがモーゼとドケチのように生地を混ぜてたのは、グルテンというものが出ないようにしてたからです。出ると良くないらしいです。ただもうここまで混ぜてしまえば意味がありません。たぶんグルテン出まくっています。

もしダメだったら、全部耐熱ボウルに突っ込んで、レンチン。それから牛乳とタマゴを混ぜたやつに浸してフライパンで焼けば、フレンチトーストの親戚と言い張れると思います。

一応失敗した時の新兵くんたちの身の振り方も考えつつ、プリンカップに生地を入れ、バナナを突っ込んで余熱しといたオーブンに送り込みます。

教官は頑張りました。あとは新兵くんたち次第です。灼熱の戦場でこんがり焼き上がってきてくれ。もしダメだったらフレンチトーストの親戚にするから。

ここまでで40分もかかって疲れましたが、20分も焼くのにかかるので洗い物を片付けます。

さて40分後。

完成は以下のごとく。

いつも思いますが、わたしはつくづくその場しのぎと辻褄合わせで生きてると思います。

さてひと口。甘いですが美味しかったです。

それで気づいたんですが、砂糖の代わりに出てきたパルスイートを使いました。砂糖と同量です。

パルスイートは、砂糖の3分の1で同じ甘さになります。

添加物を3倍入れたマフィン。とっても甘くてコーヒーに合うと思います。