たとなてかない

『た』い『と』る『な』ん『て』おもいつ『かない』という意味です。内容はフィクションですよ。

焼き肉の公共性とハンバーガーの孤独

「焼き肉で野菜を頼むな」

そういう人がいます。

「焼き肉は肉食いに来てるんだよ。なに野菜なんて健康に日和ってんだよ。肉食えよ。野菜なんか要らないんだよ」

まあ、わたしもハンバーガーに野菜は要らない主義ですから分からないではないです。

でもわたし、実は焼き肉の野菜、好きなんですよね。

そもそも焼き肉で野菜を頼むと、かぼちゃとか玉ねぎとかいろいろくるじゃないですか。

だいたい外れがない。いちばん好きなのはじっくり焼いたかぼちゃです。端っこの火が弱いところに置いとくと、忘れたころにほっくりになってて幸せ。

それから実力派の玉ねぎ。だいたいこいつは煮ても焼いても蒸しても上手いという野菜会のスーパースターです。焼き肉の網で焼いたら上手いに決まってます。甘さととろける感触がたまりません。

ぴりりと来るピーマンもいいですね。ピーマンのいいとこは、生でもいけちゃうとこです。わたしはたまに焼いた肉をピーマンに乗せて食べています。

まあ、『焼き肉で野菜を頼むな』という人には理解されないかもしれません。

なぜなら焼き肉には公共性があります。

そもそも1つの網を共有しています。共有といいますが、来た人数に従って、なんとなく『陣地』みたいなのが出来てきます。ここで全部自分の肉とか広げるとひんしゅくかいますね。

まあ肉って畳まれてると広さがわかりにくくてはみ出すことありますが。

そんな時は、

「あ、ちょっと肉がひろがっちゃったけどごめんね」

「いーよいーよ気にしないで。こっち焼けたから」

みたいな気遣いが必要とされます。

こんな環境で頼むわけですから、必然的に焼き肉は『皆が食べられるもの』という前提条件が必要となります。たいていは割り勘ですから、頼んだものを食べないと損になりますね。デートとかそういうんは知りません。有識者に任せます。

なんで、『店主お勧め採れたてどぶ川直送珍獣肉』とか頼むといけません。きっと珍しいんでみんな、

「うわー楽しい」

「珍しいから食べてみよっか」

みたいな反応をしてくれますが、腹の底では「空気読めよカルビとかだろ普通」とか思われます。

しかしここで、

「いやーやっぱし怖いから普通のカルビにしようよ」

とか言い出すとそれはそれで「空気読めよみんな口ではいいって言ってんだろ」みたいなことになるのでめんどうです。

その点、ハンバーガーは気楽です。

タワーハンバーガーみたいなものは別として、基本的に自分のバーガーは自分のものです。

「ひと口かじらせて」とかいうやつもまれにいなくはないですが、わたしはそういうタイプとは距離を置くことにしています。

基本的にハンバーガーというのは最初から最後まで1人で食べることが前提なんですね。複数人でバーガーショップに行ったとしても、

「おれチーズバーガー」

「じゃあ照り焼き」

「チキンバーガー」

みたいな注文しても別に誰もなにも言わないわけです。当たり前ですね。

自分1人で好き勝手に食べられる。だから野菜を入れる入れないで揉めなくて済む。

焼き肉には公共性があり、ハンバーガーは孤独ですが自由があるような気がします。