今週のお題「盛り」
話はどんだけ盛ってもいいというので、ゼロからもり立てることにします。
かねがね私はステーキの名店『麤皮(あらがわ)』で食べてみたいなあと思っています。しかし金がない。リピートアフタミー金がない。
ここは55000円スタートです。ほぼほぼ家賃ですな。
なので、自分に暗示をかけます。
『私はあらがわでステーキを食べてきた』。
そのつもりで食レポをしてみます。
某月某日、キングサーモンが新橋のあらがわに入荷したという知らせを受け、友人と店に向かう。あらがわは、2月から3月にかけての短い期間しかキングサーモンを取り扱わない。
本当においしいキングサーモンしか取り扱わない、という心意気だそうだ。
慌てて付いたが、店員は嫌な顔一つせず席に案内してくれる。部屋の下半分は真紅を基調に、天井に近づくほど白くなるグラデーションを用いたインテリアは、皇族がいらしてもおかしくない格式の高さ。
もちろんオードブルはキングサーモン。肉は特撰近江牛サーロインを500g頼んだ。3年半かけて育てた牛の腰上部の肉を、あっさりと焼いて食べさせてくれる。
キングサーモンは自慢するだけあってすばらしかった。サーモン色の見かけは言うまでもなく、口に入れればあっさりとしつつこくのある海のうまみが口に広がる。レモンをかければ、また味が変わって好ましい。皮まで食べたかったけど我慢した。
そして肉。わたしはいつも、ミディアムかミディアムレアで頼んでいる。あまり赤い肉が得意ではないからだ。しかし、ここではレアを頼むのが正解。
ひとくち頬張る。こんな旨いものがこの世に合ったのか、という幸せ。
中はまだ暖かく、歯が触れた瞬間に肉汁があふれてくるかのよう。そして香ばしい炭と肉の香りを吸い込みながら肉をかみしめると、かすかな弾力をのこしつつも淡くとけるように喉の奥へ消えていく。
これが肉なら今まで食べてきた肉はなんなんだといいたい。
切り分けていくのがもったいない。永遠に肉を食べていたい。できれば人の金で。
私は無言で肉を食べ続けた。600にすればよかったと後悔したが、食べ終えた時に残ったのは幸せだけだった。満腹になってしまう。
残りのデザートも、コーヒーも完璧だった。全てが肉に奉仕するため、完璧にセッティングされていた。
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ビタイチ食べたことなく、ネットと本の情報だけでもこれくらいはかけるもんだと、おからクッキー食べながら思いました。食べるだけの金が欲しい。