電車内で食べる弁当ってのはどうしてあんなにわくわくするんでしょう。飛行機の機内食も文句言う人が多いですがわたしは好きです。電車だと、自分で好きなものを選べますからなおさら楽しい。
まあだいたい崎陽軒一択なんですが。
……いや、帰りは別のを買いますが、崎陽軒なら値段がそこそこで定番という安心感があります。そして崎陽軒のシウマイ弁当って日常買うものではないんで、つい電車だと買っちゃいますね。
電車内のお弁当ってのは非日常感があるから楽しい。そう考えた人がいたんでしょうね、1975(昭和50)年にエリザベス女王が来日された際には、電車内で弁当を使っていただくというおもてなしがなされました。
企画者はたぶん鉄道かつ駅弁マニアだったんじゃないかと思います。
さて、いうは易し行うは難し。まず電車は近鉄の京都から伊勢間。めちゃくちゃ揺れます。
弁当ってのは揺らしたり傾けたりすると、中身が崩れておじゃんになるのは皆さんご存じの通り。しかしまあ相手がエリザベス女王ともなると、
「弁当が傾いて崩れました」
とは言えないんですね。わたしなら上になにものせないぎゅう詰めの海苔弁にして中にそぼろ詰めます。
しかし都ホテルのスタッフは違います。傾かないように、どこが一番揺れるか、揺れないのはどこかと調べ上げました。
その上、制作を引き受けたホテルから電車内の女王まで6時間かかります。ほぼ半日、傷まないお弁当をどう作るか。電車に乗せる前、載せた後も崩れないか。
ホテルでは弁当箱まで新しく作り上げたとか。
この辺の苦労は荻昌弘著『大人のままごと』に詳しいというかそこがネタ元です。
読んでると「なんでエリザベス女王に弁当を電車内で食べてもらおうなんて考えたんだ」という気分になってきます。マジでプロジェクトXレベルに苦労しています。
都ホテルでも苦労を忘れまいと、当時の写真が展示してあるとか。しらなきゃ「へーエリザベス女王に弁当さしあげたんだ」ですが、裏の苦労を知ると、これは日本電車史に残していい話なんじゃないかなあと思います。
ちなみに最近、新幹線でお寿司を作って食べるという楽しそうな企画があったそう。
この場合はデッキで料理が出来るため、エリザベス女王の時より楽だったろうなと思います。