たとなてかない

『た』い『と』る『な』ん『て』おもいつ『かない』という意味です。内容はフィクションですよ。

クーポンめんどい応援団


クーポンや、ポイントサービスがめんどくさいです。

世にはポイ活という、ポイントカードを利用して節約ができるこまめな人がいます。

わたしはダメです。そもそも財布がポイントカードやレシートのクーポンまみれでどれがどれやら。

最近はポイントやクーポンサービスも携帯アプリになって、「ぜひとも当店のポイントやクーポンがつくアプリを!」とダウンロードを勧められます。

携帯アプリさえ管理できなくなるのが分かったので、ほとんどダウンロードしてません。

デジタル庁かなんかでこの手のサービスの統一をして欲しいです。

そしてこの夏は観測史上に残る猛暑でした。

暑さは人から理性を奪います。

すなわち、ドラッグストアで、

「クーポンはございますか? もしくは、ポイントサービスいかがでしょうか」

と言われても、もう脳みそが麻痺って「はやく布団に入りたい」しか考えられなくなっている状態でした。

「いや、ないです」

わたしにポイントを断られた店員さん。しかし、20代くらいの若い女性はめげませんでした。

「それでしたら、アプリの割引サービスはいかがでしょうか! お得なクーポンが配布されています!」

「あー、それもないです」

めんどくさそうに、ていうかめんどいので断ったわたし。

珍しくここのドラッグストアでは携帯アプリを入れていましたが、ほんとに無かったんです。

すると店員のお姉さんは、気さくに提案してきました。

「もしかしたら、LINEにお友達登録はなさっておりますでしょうか」

提案というのは、どんなに明るくやっても押しつけがましくなるもんです。彼女はちがいました。

誠心誠意、こっちになんとか得をさせたい。いい気持ちで買い物をしてもらいたい。そんな感じにあふれていたのです。

わたしはつい、携帯を操作してLINEを確認してみました。

「あ、してます」

「よかった!」

友達が宝くじに当たりました、というニュースを聞いたような明るさで店員さんは喜んでくれました。「でしたら、LINEのクーポンが使えます!」

LINEをいじると、たしかにクーポンが配布されていました。画面を見せると、店員さんはレジを操作して割引してくれます。

「どうしてもお客様に得をしていただきたかったんです! それでは1割引となります。お買い物ありがとうございました」

にこにことおじぎをして、店員のお姉さんはわたしを送り出してくれました。

わたしがポイントをもらっても、割引されても、彼女には1円の得にもならないはずです。それなのに、彼女はまるで応援団のようにわたしを励ましてくれました。

暑くて、しんどくて、めんどくさい夕方。

お姉さんのおかげで、ちょっといい気分になって帰れました。彼女にいいことありますように。