たとなてかない

『た』い『と』る『な』ん『て』おもいつ『かない』という意味です。内容はフィクションですよ。

ああっ伊勢エビさまっ

おもわず、『さま』と呼びたくなる食材があります。伊勢エビさま、松阪牛さま、キャビアさまなどです。私の口にはあまり入らないという共通点があります。

中でも伊勢エビさま。最後にお口でお会いしたのは何年前でしたでしょう。コロナ禍以前のことかと思います。その後いかがお過ごしでしょうか。どうか環境保護のため、私以外の人類においしくいただかれていないことをお祈りしております。

ところでこの伊勢エビさま、なんと昔は鎌倉で採れたそうです。だから鎌倉エビとも呼ばれてたとか。

うっそだろ。

鎌倉って名物はしらす丼のはずでしょ。まあ、しらす丼っていったって、私の記憶する限り20世紀にはそんなもん聞いたことありませんが。

伊勢エビさまからしらすとはまあ零落したもんです。

わたしなんぞはしらすをみると、あの小さい目でにらまれてる気がして食べられません。たたみいわしとかもダメですね。あれ食べたら目の数だけ胃の中で恨み買いそう。

話を戻して伊勢エビさま。だいたい結婚式でお会いする気がします。真っ二つにされて、殻の中にグラタンが入ってるヤツ。ほんとに伊勢エビさまの身はどれくらい入ってるか気になるヤツ。

あと味噌汁ですね。だいたい刺身のなきがらから出汁とったやつです。

伊勢エビさまの姿作りとか最後に見たのか思い出せない。通販で取った伊勢エビがまた小さくて味噌汁にするしかなかったようなしょぼい思い出がよみがえってきました。

わたしは魚介類とは敬して遠ざかっていたいタイプですが、かつては海老はだいじょうぶでした。それが海老がだめになったのが、むかしのクソ上司が、

「エビってさ、死体食ってんだよね。土左衛門とかダイバーが見つけるとエビがわんさかたかってるんだって」

などと抜かしたからです。

それまでも、エビが死体を食うくらいは知ってました。が、情景をはっきり思い浮かべたのと、このクソ上司を思い出してしまうためエビがしばらく食べられなくなりました。

このクソ上司がろくでもない人で、定食屋で箸がたくさん入ってる入れものをみて、

「こういうのみるとさ、中のいくつか取ってべーってなめてもどしてもバレないよねって思うよね」

などと抜かしていました。発想がどうかしてます。炎上すればいいのに。

しかし、いつまでも過去の嫌な思い出に関わっててもしかたありません。ですからどうかわたしに伊勢エビさまを食べる機会が来ますように。活け作りがいいです。