たとなてかない

『た』い『と』る『な』ん『て』おもいつ『かない』という意味です。内容はフィクションですよ。

あんこ抜きよもぎ餅

卓上に赤い皿に乗った草餅と2つに割った草餅、それと黒文字。傍らにほうじ茶。吹き出しには『春の話を どうして秋に』わたしがまだ小さかった昭和時代はのんきなもんで、そこらへんによもぎとか土筆が映えていました。

そこら中に生えてたんで、春になると地主さんに許可もらって母親とよもぎ摘みに行きます。一面の土手っ腹に、よもぎは柔らかい若い芽を選べるほどありました。

コツとしては人があんまり入らない場所のよもぎを選ぶことです。洗っても人がふんだのって気分よくないですから。

春のぽかぽか容器に、指を緑色に染めてよもぎを摘むのは実に楽しいです。飽きたら風にあたって涼しくなったり、つくしを取ってみたりと子どもにはうってつけのレジャー。

で、帰ってきてからはいい葉っぱだけよりぬきます。虫喰ってたり枯れてたりするのはだめ。そのよもぎを茹でます。とれたてなんでアク抜きとか要らないのがいいところです。

茹で上がったらすり鉢でよく潰します。これがめんどうでした。

子どもでもできる作業なんでやらされるんですが、疲れます。

その間に、餅つき機でお餅をついときます。

できたお餅をボウルに入れて、すりつぶした真緑のよもぎを加えます。手に水をつけにがらこねると、鮮やかな翡翠色の草餅に。

最後はつぶあんを入れたら完成。

その頃は田舎のばーちゃんも来てたので、3人で餅を丸めていました。

しかしわたしはあんこが苦手なわけです。

一番好きなのは、あんぬきの草餅。網で焼いてしょう油つけて食べるのが好きでした。

ほんのり甘い餅によもぎの匂いがして、しょう油の塩辛さがちょうどよかったです。

今考えるとぜいたくですね。

田舎のばーちゃんが来てたってことは、多分もち米も会津のいい米だったと思うので。

この楽しい春の行事は、開発が進んで人が増えると取りやめになりました。

よもぎはどこでも生えてるんですが、犬を散歩させる人が増えたからです。

肥やしが犬の排泄物かと思うと、ちょっと口にしずらいですね。