館もの系ミステリー。古城とか館が舞台になってるやつですね。たいていはその館に仕掛けがあって、密室殺人が起きます。
これ、以前から思ってたんですよね。
建ててる業者は仕掛けを黙っていられたんだろうか、と。
たとえば円状の館が回転してたトリック。
建築基準法というものが日本には一応あります。ザル法とかいわれてますが一応あります。
そしてこの図面を施主から渡されたら、大抵の建築業者は脳内でフライングニードロップを相手にかましたくなると思います。
円形ってめんどくさいんですよ。わたしはCAD図面の資格もってますが、ぜったいにやりたくない仕事です。図面でさえやりたくないのに、実際に建築するほうの身になったら、殺意がわいてもしょうがありません。
そして、仮に引き受けたとして、自分がこの回転館の建設に関わったとしましょう。
絶対に喋りまくる自信があります。
「こんど建てる家さあ、すげーよ、回転すんだよ! 1回見てみなよ!」
江戸時代に隠し金山つくって、関係者を全員殺害するとかいうことができるならともかく。守秘義務をつけることもできますが、殺人事件が起きたらたぶん名乗り出てくる人がいます。
現代日本で耐震基準を満たしながら回転する家。どんだけ。知ってる人みんな話しまくりますよ。近所で聞き込みすれば一発でバレますわ。
館もの系はこれがあるから難しいです。明治大正あたりなら、建築自体は可能でしょう。しかし最近は耐震基準が跳ね上がっており、泣く泣く取り壊しというケースが相次いでいます。
そして耐震設備を整えた場合、確実に施工業者が妙な仕掛けを喋ると思います。その上、そこで殺人事件が出たら警察に通報するでしょう。
トリカブト殺人事件でも、犯人にトリカブト売った人が名乗り出てきたくらいです。
おかしなことをする人は、わりとみんな記憶されています。
では個人で建築するのはどうか。まあ、個人建築の事例はあります。違法建築になりますけど。
ただ、そこで密室殺人が起きて、真っ先に疑われるのは建設した本人です。
実は他のやつがこっそり入ってきて仕掛けを作るという手もありますが、室内で工事してバレない可能性がどれほどあるでしょう。たぶん無理。
というか、たいていのトリックは科捜研のマリコさんを連れてくると破れます。
夢の無い世の中になったと思います。