今週のお題「絵本」
『きかんしゃやえもん』って豪華な絵本があります。文章は小説『山本五十六』なんか知られる阿川弘之氏、絵は漫画家の岡部冬彦氏という豪華な顔ぶれ。
岡部冬彦氏は水玉螢之丞氏の父親っていうほうが知られてるかもしれません。まあ、代表作が昭和30年代ですから。
さてこの『きかんしゃやえもん』、蒸気機関車の『やえもん』じいさんが主人公です。頑固で一徹でおこりんぼう。時代遅れなんで周りにも笑われてるという始末です。
汽車が擬人化してるので笑ってるのは電車とかディーゼル車とかです。
でも、子ども好きで、子どもも優しいやえもんじいさんが大好き。
昔はこんなおじいさんいたような気がします。
ところが、やえもんじいさん、ちょっとしたことで喧嘩して火事を起こしてしまいました。もうこんなオンボロ要らんやろというので新しいクルマが来て、じいさんはスクラップに。
なりかけたところで救いが入り、じいさんは大好きな子どもたちと余生を過ごしましたとさ。めでたしめでたしという話です。
この話、子供時代に読んだときはふーん、と流してました。
今読むと、「やえもんじいさんになれた高齢者ってどれだけいたんだろう」と思います。
年取ると、どうしても感情の制御が効かなくなってきます。わたしも最近ムカつくことが増えて、表に出さないよう頑張っています。
そんな時、キレる老人のニュースとかきくと、いつか自分もああなるのかとため息が出ますね。なるべくならないよう心がけますけど。
やえもんじいさんみたいな人は、昔にも、今にもたくさんいたと思うんですよ。
若い時頑張ってたけど、年取って怒りっぽくなって、若い人からは馬鹿にされ邪険にされる。しまいには要らないとポイされる。
やえもんじいさんは、たまたま助かって子どもと一緒に遊べるようになりました。
でも、そうならなかったやえもんじいさんが、今までの時代にも現在にもたくさんいたはずです。社会から年寄りは要らないと捨てられて、スクラップになってしまった人々。
ネットでも、高齢者叩きが毎日のように続いています。
その人たちだって好きで年取ったわけじゃないでしょうに。
たしかに生活は苦しいし、誰かに文句もいいたくなります。
けれどこのままでは、いつかわたしもあなたも年を取って、若い人から笑われ、要らないと捨てられる。
やえもんじいさんの幸せな姿を見て思います。
どうか、ひとりでも彼のように、幸せに過ごせますようにと。