たとなてかない

『た』い『と』る『な』ん『て』おもいつ『かない』という意味です。内容はフィクションですよ。

惰眠にピアス

「暖かい布団でぐっすり寝る!こんな幸せなことが他にあるか?」とは野比のび太の名言です。全面的に同意しますね。私はロングスリーパーで、10時間くらい寝てると考えると布団の上で人生の大半を過ごしてる気がします。

そんな幸せを邪魔するのが、ピアスです。

アクセサリー売り場には、右を見ても左を見てもピアスばっかです。イヤリングはあまりありません。そりゃまあ、イヤリングを落としてなくすという事態は令和になっても未だに解決していません。

我々は地球のうらっかわとリアルタイムでゲームができるのに、イヤリングが耳から落ちることを防げないというのです。ああ科学の燦然たる敗北。

人類はイヤリングの落下を防ぐより、より単純かつ野蛮な方法で事態を解決しました。

そう、ピアスです。

なんと令和5年になっても人類は耳に穴空けて装身具を飾っているのです。原始時代から進歩のかけらもありません。原始時代の人が聞いたらびっくりするでしょう。え、1万年たってもまだ耳に穴空けてるの人類?うそでしょ。

私が高校生の時に至っては、安全ピンでピアスを空けるというバカが現存しました。しかも休み時間にやらかしやがり、耳から血がだらっだらで止まらない。頭は止まったままなのに。

あまりにスプラッタなのでちり紙を貸しました。

さて、そんな私も成人し、「ピアスでも空けてみよっか」と考えました。イヤリングを数個無くしたからです。

耳に穴を空けること自体は医者に行ったので問題ありませんでした。

問題はこれからです。

ピアス穴というのは、空けてから一月くらいはファーストピアスというのを付けっぱなしにしておかなければなりません。開けっぱなしだと自然治癒して塞がるからです。

自然治癒とはすさまじいもので、例え持ち主が美容整形したところで「俺の元の顔は違う」と戻そうとするそうです。なんか身体と意思がケンカしてるみたいですな。

ピアスの話にもどすと、穴空けてから1月くらいは、寝ててもピアス付けっぱなしにしなくてはなりません。貫通した穴が塞がるからです。なんということでしょう。穴開いた処女膜が自然治癒するとか聞いたことがないのに。してたらえらいことだけど。

ピアスつけたままってことは、もちろん寝てる時も付けっぱなしです。

これが私には無理でした。

暖かい布団に入り、柔らかい枕に耳をつける。その至福の瞬間を、耳に付けたじゃまくせえ器具が遮りやがります。めっちゃ痛え。そしてうぜえ。

必然的に一月ほど上を向いたままの睡眠を強いられます。

しかも私は寝相がよくない。寝てるうちに右を向いたり左を向いたりしています。で、寝返り打つたび起きるわけですよ耳の違和感で。

「ああ……眠い……ぐう…おやすみな(グギッ)うえええ耳が痛いなんだこれは!

こんなピアスなんか付けてられるか!わたしは寝るぞ!」

そして私はピアスと惰眠をはかりにかけて、惰眠を取りました。