たとなてかない

『た』い『と』る『な』ん『て』おもいつ『かない』という意味です。内容はフィクションですよ。

陸游とかいうおっさんの恋と現実

陸游という中国の詩人がいる。

代表作は釵頭鳳。

別れさせられた元嫁への恋情を語った詩だ。

かつてあなたの手で酒をどうのこうのとかたり、別れたのは何もかも間違いだったという激しい恋の歌である。

ここからは記憶に頼るから曖昧かつ間違ってたとしても許していただきたい。

陸游さんは若い時従姉妹*1と結婚した。ところが、陸游の母親はこの従姉妹が気に入らない。結局、陸游は妻を守りきれず別れる羽目となった。

別れて数年後、陸游は別れた妻とばったり再会する。もう妻は他の男と結婚していた。それを嘆いて陸游は詩を書いた。ロマンティックな話である。

陸游さんの再婚した嫁以外からしたら。

そんなに別れた女を嘆いてんだから独身で過ごしたと思ったら、陸游さんあっさり再婚してるのである。

しかも、再婚してから五十歳になり死にかけてもまだ別れた女の詩を読んでいる。後妻さんの立場はどこに行ったのであろうか。

後妻さんが人生相談に電話してそうな話である。

「あ、私の夫、シンガーソングライターなんですけど、別れた嫁が恋しいって歌詞をいまだに書くんです。別れて十年以上経つんですけど」

別れた女の方だってそんなに執着されても…ではなかろうか。だったらなんで別れさせられたときにもっと文句言わなかったんだよ。

というのがホンネではなかろうか。

ちなみに陸游さんと後妻さんには7人くらい子供がいる。詩には子供と孫の話は出てくるが後妻の話題はない。

さらに、後妻さんがヒートアップする出来事が起きる。

陸游五十か六十頃。

愛人を作った。

後妻激怒である。別れた女の詩をぐちぐち作るだけでなく愛人まで。しかも愛人は才能あふれる詩人だったらしい。

即別れさせた。

……陸游も若い時別れて後悔してるんだからもうちょい粘れよ、と思うがこの人、ブチ切れられるとほんとに抵抗できないタイプだったのだろう。

さらにこの愛人も災難である。まだ若いのに爺さんに嫁いで、しかも財産も碌に貰っていないと思われる。なにせこの陸游さんは金がない人だ。

愛人さんのその後を考えると幸せを祈る他ない。

陸游はその後八十くらいまで生きた。

……ロマンティックの裏側は余り探らない方がいい。

*1:諸説ある