こないだリコリス・リコイルを見終わった。盛大なネタバレなのでお気をつけて。
さて、リコリコの魅力といったら主人公のちさとだろう。本来は千束と書くべきだろうけど、なんど見ても「ちたば」と呼んでしまうのでひらがな表記で許してほしい。
ちさとは人間が大好きだ。どんな人にも話しかけ、明るく接し、ぐいぐい距離を詰めていく。こういうタイプが友達にいてくれたら楽しいだろうな、というタイプだ。
ところが中盤、ちさとの寿命がマッハでやばくなる。もともと心臓が弱く、使っていた人工心臓が破壊されて充電出来なくなった。そのために、残り寿命2か月と宣告される。
ここで、正直「また難病ものかよ」とか思ったのはおいといて、話はDAだとかリコリスとかヤタガラスとかを置き去りにして『ちさと』という少女にフォーカスしていく。
彼女がなぜ『人助け』を始めたのか、そして両親的存在であるミカと吉松シンジとの教育方針の違いが浮き彫りにされていく。
ちさとを殺人鬼にしたい吉松と、普通の少女として育てたいミカとの対立、そして吉松を無邪気に慕うちさと。吉松はちさとを殺人鬼に仕立てるべく、代わりの人工心臓と真島を使って追い詰めていく。
ところで影から日本を守っているDAだが、どうして成立したのか、そしてこれからどうなるのか、孤児の少女たちを使い捨てる倫理性においとか、そういうものは全て置き去りだ。
物語は、あくまで『ちさと』のために動いていく。
そして、『ちさと』は友人たちの手助けにより、吉松の思惑を断ち切って自分を確立する。
物語はそこで終わる。
それでいいんじゃないかと見終わって思った。
実のところ、作中の問題は割と山積みなのだ。前述したが、孤児を使い捨てるリコリス/リコベルのやり方とか、ばらまかれた銃で他人を射殺した一般人とか。どうしてミカはちさとだけ助けて、フキは助けないのか。つーか制服はデザイン変えろよ。
でも、それでいいのだ。
リコリス・リコイルは『ちさと』のための物語だ。どんな天才だって、女の子だけで世界を変えたり、救ったりなんて荷が重すぎる。『ちさと』やたきながDAを改革し、アラン機関をどうにかする必要なんてない。
それはあの世界の別の人の物語で、リコリス・リコイルの物語ではない。
これまで世界を救う少年少女たちを見過ぎてきて、どんな主人公だって世界を変えなくてはならないと思っていた。
でも、そうでもなくていい、リコリス・リコイルはそういう話だと思う。
仕事終わりにノンアルビールとポテチで楽しめる、いい作品だった*1。
*1:それはそれとしてあの世界わりとクズいのでどっか解決されて欲しいが