獅子頭。
中華のでかい肉団子だ。
写真で見るに、お玉くらいある。
子ども時代、デパ地下の惣菜屋に獅子頭が売られていた。大きくて、てらてらして、美味しそうな肉団子だ。どんなに美味しいだろう?
「お母さん、あの獅子頭買って」
母は私を見た。肉団子を見た。
「お前、あれは練り物よ」
「練り物?」
「お前の嫌いな魚が入ってるのよ。それでも食べる?」
「要らない」
以来今まで数十年、獅子頭は練り物だと思っていた。
だから、中国に獅子頭なる肉団子があると聞いた時、日本は肉がないから魚になったのだろうと考えていた。
日本が魔改造した食べ物は山ほどある。きっと獅子頭もそんなもんで、長崎あたりでジョブチェンジしたのだろう。
全然違った。
母親に騙されてただけだった。
調べても出てくるのは出目金の金魚の親戚だけである。
もしくは正月に回ってくる獅子舞の頭だ。
獅子頭は練り物じゃなかった。
そして私はいまだに中華の獅子頭を食べたことがない、