学生時代の友人にひどい方向音痴がいました。例えば四つ角で今来た道を戻ろうとするじゃないですか。そいつは違う方向へ行く。
なるほど、方向音痴ってのは今来た道も戻れないんだなあと納得しました。
まあわたしも方向音痴を笑えるほどじゃありません。二十歳過ぎまで、赤羽は埼玉だと思ってました。
だって京浜東北線で『大宮』とか『浦和』とかあるじゃないですか。みんな埼玉じゃないですか。だから「京浜東北の終点は全部埼玉なんだなー」と漠然と思ってただけです。
これを話した時、23区内の上のほうに住んでる人たちにめちゃくちゃ怒られました。ごめん。
ついでにいうと山手線で池袋から上野あたりまでは記憶がぼやけています。駒込に至っては1回降りたことがあるかどうかってくらい。どちらかといえば駒込ピペットのほうが馴染みがあります。
しかし人生で一番「これはないだろ」と思った勘違いがあります。
「ニューヨークはアメリカ大陸の右と左どっちにあるか」です。
高校の地理の時間、クラスメートの間で話題になりました。
もはや地図で「右と左」という時点でいろいろと終わっています。ていうか一応中高一貫校なのに、われわれの頭にはおがくずでも詰まってたんでしょうか。カブトムシの飼育に適してますね。
子供の頃わたしの家には世界地図が貼ってあって、そこには国旗も乗ってました。市の頃のわたしは世界地図を指さしてどこの国旗かちゃんと言えたはずです。
なのに高校まで行ったらニューヨークがどこにあるか忘れたのです。クラスメートたちは『大三元』とか『万馬券』とかいう言葉も知らず、トランプをやれば七並べとババ抜きしか分からないジャガイモのかたまり。
数年そこにいるあいだに、わたしもジャガイモになったようです。
ちょうど地理の先生が来たので、「ニューヨークはアメリカのどこにあるか」と聞いたのですが、その時の先生の顔が忘れられません。
やはり真面目ばかりでなく、ちゃんと『アメリカ横断ウルトラクイズ』を見ておくべきでした。ニューヨークに行きたいかー。