ちょっと前に、ただ「チーズケーキが食べたい」と思ったがために5つほど食べることになった。
たんにチーズケーキである。コンビニでも売ってる。で、買ってきた。しかしなんか違う。考えてみると、スフレではなく、レアでもなく、バスクでもない。
どんなんだったっけなあ、と探してるうちに5つくらいになった。
私は単にチーズケーキといったが、探求を深めると5種類くらいはあるそうな。釣りで有名な芥川賞作家、故・開高健の友人によると以下のごとし。
チーズケーキは演出次第で千変万化できるが、焼き方という観点からするとビフテキとおなじで、レア、ミディアム・レア、ミディアム、ウェルダンの四種に大別できる
開高 健. 最後の晩餐 (文春文庫 か 1-5) (Kindle の位置No.3590-3592). 文藝春秋. Kindle 版.
さらに、ウェルダンの一緒としてチーズスフレがあるとさえいう。この一文を読んで、私は頭をひねった。
レアはもちろんレアチーズケーキのことであろう。
ウェルダンはニューヨークチーズケーキ。ミディアムはおそらくスフレチーズケーキだ。
じゃ、ミディアム・レアはなんなのだろうか。バスクチーズケーキか。
しかし、この文章が書かれたのは昭和52年から54年にかけてだ。この頃、はっきりいえば、『とろけるチーズ』さえ売ってなかった*1。プロセスチーズばっかだ。
ティラミスが流行ったのが1990年代のバブル期である。そのよーな時代にだ、いくら食べ歩きの強者である先生方が、バスクチーズケーキまで知悉していたかは疑問だ。ていうかバスクチーズケーキは日本での呼び方で、本場でも2000年代に流行りだしたという。
じゃ、いったいなんなんだ。ミディアムレアチーズケーキ。
そういう疑問を、こないだ読んだ本が解決してくれた。『大人のチーズケーキとチーズのお菓子』という本である。Kindle読み放題で見つけた。
単に表紙のチーズケーキがうまそうだな、と思っただけなのだが、開いてみてびっくりした。
チーズケーキだけで7種類あった。
以上である。
何が違うのか。
おおざっぱに言うと、卵は黄身と白身を全部入れるか、メレンゲにして入れるか。サワークリームを使うか否か。湯せん焼きにするかどうか。焼いてから冷やすかどうか。小麦粉を使わないかどうか。
そういう違いである。
いやもうこれ、ケーキの一種類じゃないでしょ。
なんかチーズスイーツとか、独自の名前作って独立させて欲しい。これが全部一緒くたに『チーズケーキ』だ。そりゃ私だって「どのチーズケーキだったっけ」となる。
そして調べてみても、自分が食べたかったチーズケーキは、果たしてどんなだったろうかと悩みが増えるばかりなのだ。
チーズケーキは魔境だ。
参考資料
大人のチーズケーキとチーズのお菓子 - 株式会社 主婦の友社 主婦の友社の本
「日本人にとっての、おいしいチーズを求めて」第一回 | チーズクラブ | 雪印メグミルク株式会社
ティラミスはなぜ流行った? 大ブームになった3つの理由 | ダ・ヴィンチWeb
大流行スイーツ「バスクチーズケーキ」現地バスクで知った意外な正体(小宮 良之) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)