たまにトンカツが食べたくなって、この間専門店に行った。ひれかつを頼んだが、大根おろしが付くというので頼んでみた。
ひれかつは8つに包丁を入れられて出てくる。まずソースで食べた。こってりしたソースと、サクサクの衣のマリアージュ。その後に肉の弾力と汁が来て、噛み続けると全体が1つの味になる。
それから白い炊きたてご飯をひとくち。おいしかった。濃すぎる味になった口がちょうどいいあんばいになる。さらにそこへ熱い緑茶。さっぱりした。
ここで味噌汁をすすって違う味を楽しむ。お新香とキャベツも食べる。なにごとにもたくさん調味料をかけるのが私の流儀である。ドレッシングをかけたキャベツはシャキシャキしている。
そして二つ目の肉は、ポン酢をかけたおろし大根を山盛り乗せていただいた。
初めてだったが、大根おろしと揚げ物の相性のよさは確認済みだ。アツアツの揚げたてヒレカツに冷たい大根おろし、そしてポン酢の中の爽やかな柑橘がこたえられない。さっぱりとこってりが4つに組んだ名勝負だ。
ここにご飯をいれてまた中和する。ソースで食べるヒレカツは、次はカラシを乗せた。泣くくらい付けるとおいしい。
トンカツは絶対にソースだと思っていたが、おろしもいい。そして大根おろしとヒレカツを食べた。ソース。おろし。ソース。
昔、池波正太郎先生の随筆で、トンカツをソースにひたひたに浸したものを一晩おいてアツアツご飯と食べる、という話が書いてあった。これはもう考えるだけで濃くてこってりしている。それまでも私はとんかつはソース党だったが、それからさらにソース党になった。
しかし、大根おろしも悪くない。こんどの悩みが増えた。
こういう悩みは、しあわせなものだと思う。