たとなてかない

『た』い『と』る『な』ん『て』おもいつ『かない』という意味です。内容はフィクションですよ。

校正の理想と現実

これからの話は全てフィクションだが、たまに校閲さんのすごいエピソードが流れる時がある。

みんな「そこまで見ててすげえ!」「校閲さんプロの仕事だなぁ」とかいう。

さて、現実に皆さんがプロから校閲されたらどうなるだろうか。

まず百人のうち百人がブチ切れる。

『ゲーミンクお嬢様』に有名な台詞がある。

正論が人をキレさせることは

いくらでもありますけれど

人を救った例は

有志以来一度も

存在しませんわ!

これである。

人間正論を言われるほどブチ切れる。

例え人間が人門になってて「間」と直されたとしても、たかがその程度でも、人間はブチ切れる。

「あっはっは、自分は絶対そんなことない」

そう言う人もいるだろう。

そんなことはない。

絶対ブチ切れる。

「間違いを見つけてくれてありがとう!」

そんな徳のあるやつは存在しない。

たまに「この校閲の仕事はすごい」とか回ってくるが、おそらくそう言う人は今世で徳を積むために生きている御仏である。私は出会ったことがない。

私は若い頃印刷屋で校正をやらされた。DTPオペレーターとして入ったのだが、なぜか校正のほうがよかろうとやる羽目になった。

そしていろんな人の原稿を見たが、直されて怒らない人を見たことがない。

いや、表面穏やかなのだが、その後冷たくなるとかよくある。

短気な人だと「オレがニンゲンを人門と書いたらそれが正しいんだよ!」となる。そしてそのまま通す羽目になる。

正しさとは何か。正義とは何か。妥協と給料であろうと流すしかない。

もっとも印刷屋だから基本相手は文章のプロでなく素人ではある。

それでもみんな自分の文章は、己は正しいと思っている。

自己の無謬性を誤字脱字如きで損なわれたくないと言う人がほとんどだ。

それだから、事実関係の指摘などすれば大問題になる。

「東京の北に沖縄はありません」

こんな当たり前だろみたいな話でもキレられる。

相手は間違ってるのはわかっている。そしてそんな自分を恥じている。しかしそんな現実を認めたくない。

なのでこちらにキレることとなる。

対応としては、

「恐れ入りますが、ご確認していただいてもよろしいでしょうか。

沖縄の件なのですが、東京との位置関係を確認していただけると幸いです。

お忙しい中お手数ですが、こちらのミスかもしれませんのでよろしくお願いします」

これくらいでやっとキレられなくなる。

つらい。

もっとも私がやってたのは校正(誤字脱字レベル)であって、もっとレベルの高い校閲様とは別世界の話である。やってた期間も数年だ。

そしてその短い経験で思う。

小説やチラシの誤字脱字で死なないんだから、みんなもっと寛容になろう。

つまりこのブログに誤字脱字ミスがあろうと見ないでおいて欲しい。