たとなてかない

『た』い『と』る『な』ん『て』おもいつ『かない』という意味です。内容はフィクションですよ。

初めて食べたグラタン

チーズチーズチーズ!で忘れてたチーズがありました。モッツァレラチーズ。あの焼いた時と生でぜんぜん違う憎いヤツ。生だとちょっとこりこりした豆腐みたいな、そしてミルクっぽい感じです。

しかし焼くと変わります。とろーんするーんのびーん。伸びるチーズ決定戦をやったら多分1位でしょう。

伸びるチーズで思い出しました。私が初めて食べたグラタンの話です。

昭和のヨコハマでは伸びるチーズは珍しいもんでした。チーズといえば箱に入ってて、切る目印の赤いガイドラインをつけたやたら硬いフィルムに包まれておりました。

今では業務用商品で、たまにスーパーで売られてます。

QBBキングサイズチーズ800g

で、これを母が真ん中から切っていくわけです。真ん中から切って両方の切り口をくっつけて輪ゴムで留めると、乾燥して硬くなりません。

たまに親の目をかすめてはチーズを切って食べて元のようにくっつけて知らん顔をしてますが、やり過ぎるとバレます。

『切れてるチーズ』ってのがどうして『切れてる』かというと、昔のチーズはみんないちいち包丁で切ってたからです。

で、この頃のチーズはべつに伸びません。焼いてもちょっと膨らんで色がつくくらいです。

そんな時代、チーズがまだ伸びていない時代、金持ちの伯母のとこに遊びに行くとレストランに連れてってもらえました。

ちょっと薄暗い、黄色い感じの電灯に照らされたファミレスではない高級店です。イタリアン専門店。たぶん。

そこで伯母さんが注文してくれたのが、グラタンだったわけです。

その店のグラタンは丸い皿に入っていて、溶岩みたいにチーズとホワイトソースが煮えたぎっておりました。泡がほんとに立ってます。

店員が危ないですからご注意くださいっていうくらい熱々。湯気がおさまるのを待っても、まだグツグツ煮えています。

端っこは茶色に焦げていて、チーズとホワイトソースの間からマカロニがすこし顔を出しています。

食べ頃の熱さになったころ、フォークを突っ込んで持ち上げると……。

伸びる伸びるチーズの糸!

たらんとたれて、わたしこそ本場からやってきたのよ、というチーズ。それに絡まったホワイトソースとマカロニがこたえられません。

チーズってのは伸びるもんだ、とまだ小さい私が理解した瞬間でした。

 

今では伯母はもう亡くなり、その店もたたんだといいます。