こないだごんぎつねで話題になった石井光太さんの著作で思い出した『43回の殺意』。
2015年、川崎で起きた中1男子生徒殺害事件のノンフィクションです。実は私この現場の近所に住んでたことがありまして、出てくる場所が身近というか知ってる所ばかりでした。
だいたいとして、「なんで被害者は隠岐の島からわざわざ川崎に引っ越してきたのか」や「加害者連中が生活してきた背景」とかが描かれています。
この「加害者連中」てのがまあ、なんというか、救いがない。「川崎区で有名になりたきゃ人殺すかラッパーになるかだ」という言い回しがあるくらいですが、金もなく、才能もなく、暴力も弱く、ラッパーになるほど頭の回転があるわけでもない。
つまり不良にもなれないしラッパーも目指せない、そして普通の生徒のようにもなれない。そういう連中が「他につるめる相手もいない」から一緒にいたというだけ。
ちなみに崩壊家庭がほぼほぼですので、夜は神社とか公園とかでつるみます。
真綿で首絞められるような、絶望。
舞台はだいたい川崎区の京急大師線沿線です。終点、というか始点は京急川崎という駅なんですが、この駅周辺がなかなかえぐい。
京急線とJR線で遮られた地区を、北側、つまり事件と逆の方向に線路を超えて進むとします。そこにあるのは川崎ラゾーナ、ソリッドスクエアといったショッピングモールと超高層ビルです。
京急川崎駅前にあるのは飲み屋とパチンコ屋とヨドバシカメラアウトレットです。一応昔はゲーセンとかありました。
そういうところから見上げるソリッドスクエア。割と救えない。
私はたまたま川崎に医療職やってた親戚が住んでて勤め先があったから適当に物件選んでたわけですが、ここで子どもやってたら面白くなかっただろうなあってのは思います。
手に入りそうなものは全部見えるのに届かないんだもの。
加害者連中も被害者も、隠岐の島で暮らしてたらそんなことにならないかったんじゃないかなあ、って。
隠岐の島はとてもいいところです。魚はおいしいし、海はきれいで、自然も歴史も豊かで。1回行っただけですが。